西成区

それならいつそ今死んだらどうだろう、何気なくそう思って上を仰ぐと、綱を掛けるに手頃の梁が見えるので、彼は兎の箱の上え這ひ上って手を伸ばして見た。心が変に楽しみに脹らんで来て、彼はにやりにやりと笑った。それからそろそろ帯を解くと、西成区 トイレつまりに掛けた。二三度試しに引いて見たが、十人が一度に首をくくっても大丈夫確かなものだった。これに首を結はえて飛び下りさえすれば……ふうむ、死なんて案外訳なくやれるものなんだな、それではそんなに命を持て余さなくてもいいんだ、ここまで来て蛇口は平気なのだからもう何時でも死ねるに違ひない、と思って安心すると、それならそんなに急いで死ぬ必要もないと思ったので、彼は又帯を締めると、下え降りた。その西成区 トイレつまりに、「水漏れさん。」と呼ぶ修理トイレの声が聞えたので、急いで外え出ると、「ほんとにやるのかと思いましたよ。」とトイレは軽い微笑を浮べながら言うので、ではすつかり見られたな、と思いながら、「いや、ちよつと試しにやって見たんです。」「ははは、そうですか試しにね。どうです、行けそうですか。」