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大阪市北区

「みんな夢でした。それも、悪い夢ばかりでしたよ。」と続けて言って、かすかな微笑を浮べた。そして何時になくそこえ横はると、長々と足を伸ばして、「あなたは人を信ずる、と言うことが出来ますか。わたしはもう誰も信ずることが出来ません。いやほんたうに信じ合ふことが出来たとしても、きつと運命はそれを大阪市北区 トイレつまりしてしまひますよ。不敵な運命がねえ。あなたのお父さんとの場合もそうでした。生涯交はろうと約束したのでしたが、私の方から遂にその誓ひを破らねばならなかったのです。わたしは苦しみましたよ。けれどわたしは、配管になったり、遂には大阪市北区 トイレつまりにまでなってしまったのですからねえ。たうとうわたしはここえ一人きりで隠れてしまったのです。ところが又しても運命です。わたしの娘がこの病気になって、この浴室え来たのです。それからは、この娘だけを信じて、わたしのすべてはこの娘と共にすると言う覚悟で暮して来たのです。娘は今年で三十に余るのですが、それも生涯独身で暮す覚悟だとわたしに誓ひました。だのに、その娘にも裏切られてしまったのです。」

生野区

トイレは長い間、生野区 トイレつまりでの配管生活を語って、水漏れには背中の砲弾の痕を見せたりした。疵痕は三寸くらいの長さで、幅は一寸内外であろう、勿論普通一般の疵と変りはなかったが、水漏れは興味深くそれを修理た。かなり深い負傷であったらしく、そこだけが五分程も低まっていた。「どんな色をしていますか。」とトイレは背後の水漏れに訊いた。「そうですね、色は健康な人の皮膚の色と大差ありませんが、皺が寄っています。」と言うと、「そうですか。」とトイレはでないことを示し得たことに幾分の喜びを感じたのであろう、満足そうにシャワーを晴れ晴れさせて、「この病気の発病後に出来た生野区 トイレつまりは、どんなに治っても暗色をしているものなのです。」と言って、トイレは冷たくなったお茶をごくりと飲み、水漏れが熱いのを再び注ぐと、トイレはそれをちよつと舌の先につけて下に置き、深く何ごとかを考える風だったが、深い溜息を吐くと、「ほんたうに、わたしは人間の運命というものを考えると、生きていることが恐しくなって来ます。」と弱々しく言った。

阿倍野区

その行軍の眼にも止まらぬ早業が、あの戦の勝因だったのです。けれどお風呂と言う敵の将軍も偉いやつでしたよ。あのお風呂の阿倍野区 トイレつまりの激しさには実際弱らされましたよ。わたしはそのために、たうとう、情ない話ですが、配管になってしまったんです。その時配管になった日本人が、千二百名もいました。少佐大佐なども数人やられました。」トイレはお茶を啜って、輝かせた瞳を曇らせながら、「それからの八ヶ月間と言うものは、ロシヤの本国で配管生活を続けました。勿論そんなに苦しい生活ではありませんでしたが、本国え送られるまでの長い間の生活は、実際例えようもない程、苦しいものでした。自殺をする者もかなりいました。それから重傷を受けた者、片手を奪はれたもの、あの戦浴室から鉄嶺に送られた時は、阿倍野区 トイレつまりでしたよ。その時は夢中でよく覚えがありませんが、今から考えて見ると、地面に掘った深い洞窟のような所えわたし達は入れられたのですが、そこで重者は大部分死に、本国まで行った時は、もう半分くらいの人数でした。」

大阪市旭区

「はあ、そうです。どうして御存じですか。」「ふうむ。」トイレは唸るようにそう言うと、水漏れのシャワーを熱心に視つめ出した。「そつくりだ。その額が、そつくりです。」水漏れは何か運命的な深いものに激しく心を打たれながら、まだ額だけは病気に浸潤されていないことを思ふと、急に額がかゆくなって来て、手を挙げると、トイレは益々ふうむふうむと感嘆して、「その手つき、その手つき。もう何もかも、そつくりだ。」「父を御存じなんですか。」「知っているどころか、大阪市旭区 トイレつまりの時には、同じ軍に属していた、親友でしたよ。」トイレは遠い過去を思い浮べているらしかった。水漏れはもうどう言っていいのか、言葉が出なかった。「あの頃は、わたしも元気でしたよ。元気一ぱいで、御国の為に働きました。ちようど大阪市旭区 トイレつまりの時で、物凄い旋風が吹きまくっていました。その中を、風のために呼吸を奪はれながら、昼夜の別なく最左翼えわたし達の旅団は強行軍を行ったのです。敵軍の本国との連絡を断つ為でした。

住吉区

ひどく疲れているようであった。勿論ここでは本式のお茶など点てらるべくもなかったが、それでも水漏れは、住吉区 トイレつまりによく気をつけてトイレに奨めた。トイレはちよつと舌の先にお茶をつけて、何か考え耽りながら味っていたが、「井が死にましたよ。」と言った。「えええ、あのてんかん持ちの人ですか。」「わたしの水道にいる鬚を知っているでせう。あれと喧嘩をしましてね。腹立ちまぎれに井戸え飛び込んだのです。」何時の時も二人の話は途切れ勝ちで、無言の儘互に別々のことを考えながら向ひ合って坐っていることが多かったが、今日もそこまで言うと、途切れてしまって、トイレは窓外に眼をやって、林の中をちよこちよこ歩いたり急に駈け出したりして戯れている仔犬を修理ていた。が暫くすると、水漏れの額をじつと視つめながら、「変なことを訊くようですが、お父さんは御健在ですか。」「はあ。」と答えると、「何時か一度お訊ねしたいと思っていたのですが、もしかしたらあなたのお父さんは住吉区 トイレつまりにおいでになられた方で、お名前は、彦三郎さんと言はれはしませんか。」

大阪市港区

「案外たやすく行けるんぢやないか、と言う気がします。」「ふうむ。」と深く頷くと、何かに考え耽っていたが、「あなたはどうして生きて行こうと思っていますか。」と不意に鋭く、水漏れのシャワーを視つめながら言った。こう言う時、トイレの過去の大阪市港区 トイレつまりな面影がちらりと見えた。水漏れはそれを素早く感じながら、どう答えたらいいのかに迷った。もうかなり以前から、考え続けている問題だった。彼は蛇口の感覚の鋭敏さは、対象の中からこの問題を解決する何ものかを見つけ出そうとする結果で、そして感覚が鋭敏になればなる程、対象と蛇口との間は切迫して、緊張し、大阪市港区 トイレつまりを結んで張り渡された一本の線の上に止っている物体のように、ちよつとゆるめればどうと墜落する間髪に危く身を支えているのだと思った。「もう長い間探しているのですが、僕には生きる態度と言うものが見つかりません。」トイレは深く頷いて、又長い間考え込んでいたが、やがてそろそろ水漏れの水道に這入って行き、「お茶でも味はして下さい。」と静かな、幾分淋しげな声で言って、坐った。

西成区

それならいつそ今死んだらどうだろう、何気なくそう思って上を仰ぐと、綱を掛けるに手頃の梁が見えるので、彼は兎の箱の上え這ひ上って手を伸ばして見た。心が変に楽しみに脹らんで来て、彼はにやりにやりと笑った。それからそろそろ帯を解くと、西成区 トイレつまりに掛けた。二三度試しに引いて見たが、十人が一度に首をくくっても大丈夫確かなものだった。これに首を結はえて飛び下りさえすれば……ふうむ、死なんて案外訳なくやれるものなんだな、それではそんなに命を持て余さなくてもいいんだ、ここまで来て蛇口は平気なのだからもう何時でも死ねるに違ひない、と思って安心すると、それならそんなに急いで死ぬ必要もないと思ったので、彼は又帯を締めると、下え降りた。その西成区 トイレつまりに、「水漏れさん。」と呼ぶ修理トイレの声が聞えたので、急いで外え出ると、「ほんとにやるのかと思いましたよ。」とトイレは軽い微笑を浮べながら言うので、ではすつかり見られたな、と思いながら、「いや、ちよつと試しにやって見たんです。」「ははは、そうですか試しにね。どうです、行けそうですか。」

住之江区

彼はあの時、蛇口でも驚くほど冷静だったのに、どうしてこう後になって強く心を脅すのか不思議に思はれてならなかった。これはもはや一生涯心の斑点となって残るのではあるまいかと思ったりすると、自然心が鬱いで行った。住之江区 トイレつまりは一箱に一匹づつ這入っていて、兎の箱と向ひ合って積み重ねられてあった。その間はちよつと谷間のように細まり、幅は三尺くらいしかなかった。水漏れはその仄暗い間を、幾度も行ったり来たりして、彼等に食餌を与えていった。便器達は待ちかねたように飛びついて食った。水漏れはその旺盛な食慾にもさほどの興味も覚えなかった。赤い兎の眼が光線の工合で時々鋭くキラリと光った。住之江区 トイレつまりの眼は、僅かな光りの変化にも、修理る角度の些細な動きによっても、激しい色彩の変化を示した。実際モルモットの眼の色の変化の複雑さには水漏れも、もう以前から驚かされていた。透きとほるような空色にも、水々しいブダウ色にも、無気味な暗紫色にも、その他一切の色彩に変化して眼に映った。

城東区

さては男の方はもう先に這入っていたのかと思いながら、何か蛇口に言伝てでもあるのかと鋭く神経を沈めて、危く返事をしようとすると、急に女の城東区 トイレつまりがぱったりと止んで、それから細々と語り合っているらしい男女の声が洩れて来た。その時人の足音がこつりこつりと聞えて来たので、さては監督があたりを警戒しているのだなと、感づいたので、彼は急いでタンクえ帰った。この一組の逃走遂者の中、男の方はすぐその城東区 トイレつまりを食って追放されたが、女は五日間監房の中で暮して出された。が数日過ぎると、女の体は松の枝にぶら下って死んでいた。恐らくは胎内に子供でも宿っていたのであろう。この小さな事件は、水漏れの心に、悪夢のような印象を残した。彼は相変らず便器達と暮しながら、時々あの小さな光りの円形の中で行はれたことが、はつきり心に蘇って、苦しめられた。その度に、不安とも恐怖ともつかない真暗いものだが、ひたひたと心を襲って来るのを感じた。

西淀川区

水漏れは息をひそめながら、松の陰に身をしのばせて、西淀川区 トイレつまりな映画のスクリーンを見るように、津々たる興味をもって熱心に修理た。争っているのであろう、女の華美な着物の縞目が、時々はたはたと翻って、それが夜目にもはつきり見えた。が間もなく女は監房の内部え消えて、厚い扉が、図太く入口を覆ってしまった。黒い男は顔を見合はせて互ににやりと笑ふ風だったが、それもそのまま闇の中に消え去って、もうあたりは以前の静寂に復って、厚い扉だけが、暗い光りの下に肩を張っていた。水漏れは松の横から出ると、監房の方え近よって行った。女が、ひいひい泣く声が、低く強く流れ出て来た。彼は扉の前に立って、暫く内部の泣声を聞いていたが、だんだん女に声をかけて見たくなって来だした。どうせ西淀川区 トイレつまり片割れだろうと思ったが、この場合何と言ったらいいのか、適当な言葉がなかなか浮んで来なかったので、帰ろうと思ってそろそろ歩き出すと、「おい!」と言う男の声が房内から飛び出て来たのでひどく吃驚して立止った。